ひまつぶしにMTGでも…

主にMTGアリーナ(https://mtg-jp.com/mtgarena/)について話します

MTGのドル賞金の受け取り方 その1 源泉徴収とか確定申告とか

23/8/6 海外送金関連と送金先の銀行についての記事を書いた。
alphabate.hateblo.jp

前にも書いたけど、幸運なことに2022年はアリーナチャンピオンシップという大会に出場できた。

alphabate.hateblo.jp

この大会は参加者全員に賞金が出る。私は$2,500をゲットできた。
そんでこれが賞金受け取ってから送金までの明細。

見てもらうとわかるんだけど、源泉徴収として30%が賞金から引かれている。
さらに送金は国をまたぐ形。国内の円送金とは勝手が違ってくる。

源泉徴収30%って高くない? 外国送金ってどんな手数料かかるの?
などなどわからないことがたくさん。
一応自分なりに調べて納得できたが、かなり手間がかかった。
なので今後同じような状況になる人のためにメモを残しておきたい。

ちなみに私は税理士の資格等はない。
またMTGは趣味でやっていて個人事業としてやっているわけでもない。
なので不正確だったり特定のケースしかカバーできていない説明の可能性があり、現時点の知識なので2023年以降の状況には合わない可能性があることを念頭において読んでほしい。

本当に賞金は30%源泉徴収されてしまうのか? テキスト内容を念のため確認したい

まず気になるのは30%の源泉徴収。そんなに取られてしまうのだろうか。

そのことを調べる前に、まずは源泉徴収とはなにか確認しておきたい。
これは日本の国税庁のHPの説明だけど、他の国でも大きくは違わないはずだ。
www.nta.go.jp

第1 源泉徴収制度について
Ⅰ 源泉徴収制度の意義 所得税は、所得者自身が、その年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」が建前とされていますが、これと併せて特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。

通常自分が申告して納付する所得税を、支払者が徴収して納付しているのが源泉税である。
なるほど、じゃあ30%源泉徴収されることは確定、税金についてはそれで終わりだね。…とはならない。
日本の居住者の所得への課税は下記のようになっている。
www.nta.go.jp

居住者の課税所得の範囲
居住者とは、日本国内に住所があるかまたは現在まで引き続いて1年以上居所がある個人をいいます。
なお、居住者は、「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分かれます。

(1)非永住者以外の居住者

非永住者以外の居住者は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。一般的にはほとんどこのケースに該当します。

日本居住者は日本以外の国の所得も日本で課税されるのだ。

私が賞金を獲得したアリーナチャンピオンシップはアメリカ開催として扱われる。
WoCが源泉徴収し、納付しているのはアメリカ。
アメリカの税法上、アメリカの非居住者でもアメリカ国内の所得は源泉徴収するルールらしい*1
それとは別に日本で所得税を申告(確定申告)し、納税しないといけない。

…は? 源泉税30%取られた上に日本でも税金取られるのかよ!?

というのはおかしいから、どうにかするのが租税条約というものらしい。
今回関連するところだけでいうと、日本とアメリカは租税条約を結んでおり、
アメリカの源泉徴収と日本の確定申告両方での課税を回避できるらしい。

実際に根拠になりそうなのはこの辺。

www.mof.go.jp

所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の条約
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/USA_ST_jp.pdf

第二十一条1 一方の締約国の居住者が受益者である所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないもの(以下40「その他の所得」という。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

そんでアメリカで公認会計士の資格を持っているの記事でもこんなのを見つけた。
juscpafy-tax.net

事前に 租税条約の適用を受ける資格を有する証明書(Form W-8)をアメリカの源泉徴収義務者に提出することで源泉徴収税が減免、免除されます。

juscpafy-tax.net

アメリカで源泉徴収の対象となるFDAP所得
日本国籍アメリカ非居住者(個人)と非居住法人が源泉徴収の対象となる所得に定期定額所得(FDAP:Fixed, Determinable, Annual, or Periodical所得)があります。

FDAP所得とは、不動産または動産の売却から得られる利益、非課税の地方債の利子や適格奨学金収入などを除く以下の収入です。

不動産の賃貸料等の不動産収入(Real property income, such as rents)
配当(Dividends)
利息(Interest)
年金(Pensions and annuities)
扶養手当(Alimony)
ロイヤルティー(Royalties)
奨学金フェローシップ助成金(Scholarships and fellowship grants)
その他の助成金、賞品、賞(Other grants, prizes and awards)
個人的サービスの報酬(Compensation for personal services)

源泉徴収税の免除 W-8BEN
米国で源泉徴収税の免除を受けるためにはあらかじめ租税条約の適用の手続きをすることです。
FDAP所得の支払いを受ける前に、FATCA 法に基づき源泉徴収義務者(米国側)に租税条約の軽減免税の適用を受ける者の証明書(個人用「Form W-8BEN」 / 法人用 「Form W-8BEN-E」)を提出します。

アメリカ確定申告で還付請求による払い戻し
税金が差し引かれた所得の確定申告をアメリカ内国歳入庁(IRS)と各州へ提出し還付請求により払い戻しを受けます。

ごちゃごちゃと貼ったけど、源泉徴収は予め租税条約適用手続きとして個人用「Form W-8BEN」を提出してすればされないし、源泉徴収されたときはアメリカで確定申告をすれば還付される、ということらしい。

WoCのサイトでも賞金に関するQ&Aなどを探していくと関係ありそうなものを見つけた。

Event Prize Support
https://magic-support.wizards.com/hc/en-us/articles/360000207923-Event-Prize-Support

I have an ITIN number and shouldn’t have taxes withheld – what do I do now?

Please email us directly at premierplay@wizards.com and attach:

A copy of your letter from the United States Treasury with your ITIN number on it
An updated W8-BEN (which you can download from the IRS website).
Make sure to fill out Part I (Your ITIN number goes in line 5).
Fill out line 9 in Part II.
Sign the bottom.
Once we receive this email, we will send it over to Hasbro Accounting for their approval. As soon as we get approval from them to no longer withhold taxes from your US prize winnings, we will let you know.

私はITIN番号を持っており、源泉徴収の対象ではないはずです。どうすればよいですか?

premierplay@wizards.comまで直接メールでお問い合わせいただき、以下を添付してください。

1.ITIN番号が記載された米国財務省からの書類のコピー
2.最新のW8-BEN(IRSのウェブサイトからダウンロードできます)。
 1.必ずパートIに記入してください(お客様のITIN番号は5行目にあります)。
 2.パートIIの9行目に記入してください。
 3.書類の下に署名してください。

弊社はこのメールを受け取り次第、Hasbroの経理部門に送信して承認を求めます。お客様の米国の賞金から税金を源泉徴収しない旨の承認が得られ次第、お知らせします。

源泉徴収されるべきでないときは、W8-BENにITIN番号を記載して、ITIN番号書いてあるアメリ財務省のレターと一緒にメールで送れとのことだ。

ITIN番号っていうのはアメリカの納税用番号の一種らしい。
jp.usembassy.gov

ソーシャル・ セキュリティー・ナンバー(社会保障番号、SSN)は、米国籍の方及び米国の永住権を持つ方(グリーンカード保持者)、米国籍以外の方で米国内で働く許可を得た方、あるいは米国連邦年金受給のために社会保障番号が必要な方のみが取得できます。

ソーシャル・セキュリティー・ナンバーを取得する資格のない方には、納税申告用として米国の税務当局である内国歳入庁IRSにより個人用納税者番号(ITIN)が発行されます。

こいつを手に入れるには申請書Wー7という申請書を記入して、身分証明書などをIRSに送ることになるらしい。
さらに調べて行くとどうやら大使館で認証してもらったパスポートしか身分証明として認められない、そもそも確定申告などの理由がないとITIN番号は発行してもらえない、など制限があるっぽいがどこまで自分の理解が正しいかわからない。

自分はパスポートを持っていないので取得に結構な金額がかかり、それで還付申請がうまく通らなかったら払い損のリスクがある。
なお還付のタイムリミットは賞金をもらった翌年4/15までの確定申告か、そこからさらに3年の修正申告可能な期間になるようだ。

なのでひとまずこの辺でギブアップ。猶予期間でもう少し調べて手続きに確信を持てるようになったら申請するか、税理士に依頼するかしたい。

ちなみに還付は外国小切手が送られてくるらしいが、外国小切手を日本国内で換金できるのは現在口座維持に手数料がかかるSMBC信託銀行プレスティアだけらしい。全てにおいてめんどくさい。

まとめ:ドル賞金のもらいかた

源泉徴収されないルート:賞金をもらう3ヶ月前くらいから準備?
1.パスポートを用意
2.アメリカ大使館で認証
3.申請書W−7と認証パスポート(+ITIN番号が必要な理由の証明書類?)でアメリカIRSからITIN番号を発行(要7週間)
4.ウィザーズにITIN番号記載のW8-BEN等を提出
https://magic-support.wizards.com/hc/en-us/articles/360000207923-Event-Prize-Support

源泉徴収を還付ルート:賞金受取の翌年4/15までアメリカに確定申告(またはその後3年以内に修正申告)
1.パスポートを用意
2.アメリカ大使館で認証
3.申請書W−7と認証パスポート(+ITIN番号が必要な理由の証明書類?)でアメリカIRSからITIN番号を発行。なお4と合わせて申請可能との説あり(ITIN番号が必要な理由が4の書類なのでセットで申請が現在の正規ルートだとして違和感ない)
4.アメリカの確定申告。あまり調べていないがForm 1040NR(米国非居住者用の所得税申告書)及びForm 8833(日米租税条約による恩典を適用する場合の情報開示)、Form 1042-S(米国非居住者用の支払調書)あたりの提出が必要らしい
fukushimacpa.com
5.外国小切手が送付される(要6ヶ月程度)
6.外国小切手を換金。なお日本で2023年1月現在換金できるのはSMBC信託銀行プレスティアのみで三菱、みずほ、三井住友銀行あたりもだめらしい

どちらのルートも日本で賞金についての確定申告をすること。

なお外国税額控除という仕組みがあって、これは日本側の確定申告で二重課税になってる部分の還付申請ができる仕組み。
アメリカで30%源泉徴収されているなら使えるかもしれないんだけど、還付限度額が外国所得/全世界所得みたいな式で計算されてあまり戻ってこなかったり、そもそも還付可能な外国の税金については使えないのでは? とか読めたりするので自分はあまり調べていない。

ちなみに、給与所得者で年末調整をしてそれ以外の所得が20万円以内の人は確定申告しなくてもよいと言われることがあります。
国税庁でもそんなふうに書かれていることがあります。
www.nta.go.jp

副収入などがある方の確定申告
次のような副収入などがある方の確定申告に関する情報を提供しています。

1 衣服・雑貨・家電などの資産の売却による所得
2 自家用車などの貸付けによる所得
3 ホームページの作成やベビーシッターなどの役務の提供による所得
4 暗号通貨の売却等による所得
5 競馬などの公営競技の払戻金による所得
上記の所得を含め年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要です。

ですが年末調整後給与所得以外の所得20万円以下の確定申告が不要なのは所得税だけで、住民税は基本的に確定申告が必要です。
これは所得税国税庁、住民税は各地方自治体が管轄で別物、かつ住民税には所得税のような20万円以下免除ルールがない(もしかしたらある自治体もあるかも…?)からです。
例えば横浜市にはその他所得20万以下の所得税の確定申告が不要な人を意識したこんな記載があります。
www.city.yokohama.lg.jp
(強調は筆者)

申告をしなければならない⼈
 1月1日現在、横浜市内に住所のあった人(1月2日以降に転出された人も含みます。)で、前年中の所得が次に該当する人です。
 ただし、所得税の確定申告書を税務署へ提出された人は、同時に市民税・県民税の申告をしたものとみなされますので、改めて市民税・県民税の申告をする必要はありません。所得税と異なる課税方式を選択される人は、市民税・県民税の申告が必要な場合があります。詳細は税務署が配布する「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」や「市民税・県民税申告の手引」をご覧ください。)


1.公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の人

2.1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得以外の所得(配当、不動産、雑所得など)の金額の合計額が20万円以下の人

3.2か所以上から給与の支払を受けている人で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得以外の各種の所得金額との合計額が20万円以下の人

4.所得がなかった人(申告がない場合は、国民健康保険加入者の保険料の減額判定及び各種福祉関係の申請手続に影響がでる可能性があります。)

ちなみに私は過去20万円以下の所得があったので住民税用の申告用紙を持っていったら職員の人に20万円以下は確定申告いらないんですよ、と言われたことあり。
所得税の確定申告と同じ会場だったからかもしれないけどそれぐらい知られてない可能性あり。


というわけで面倒な税金の話でした。
情報がツギハギし過ぎなので、あやふやな知識でやるよりは国際税務ができる税理士あたりに相談・業務委託したほうが良さそうに思う。
というか自分が探したい。還付10万円くらいになるからパスポート取得費含めても5万円ぐらい費用かかっても十分に感じるし、それ以上でも検討の余地ある。

長くて面倒な話だけど、それだけ自分で調べるのが面倒だったので、これから賞金を受け取る機会があったり、確定申告をする人の参考になったら幸いだ。
次回は外国送金について調べたことをまとめてみようと思ってる。

*1:日本も非居住者は日本国内の所得のみ源泉徴収だったりする